胃酸の働きは多岐にわたり、直接的、間接的に消化をサポートしています。
その働きの中から今回は、タンパク質消化のファーストステップとなる「タンパク質の解きほぐし作業」について見てみましょう。
タンパク質は、アミノ酸が一列につながって作られています。
アミノ酸が何百も連なっていくと細長い糸状になりますが、その糸はストレートに伸びていることはなく、ごちゃごちゃにもつれた糸くずのように丸まっています。
胃酸には、タンパク質のもつれた糸を解きほぐしていく作用があります。
こうして、元々のかたちが変えられていくことが、「タンパク質の変性」と呼ばれています。
タンパク質は、アミノ酸の一粒一粒にまで切り分けられてから、吸収されていきます。このアミノ酸とアミノ酸のつなぎ目をカットすることが、「消化」ですね。糸を切るハサミのような役割を果たしているのが、「消化酵素」です。
タンパク質の消化酵素にはいくつもの種類があって、それぞれ担当する切断部位が違います。トップバッターの消化酵素が大ざっぱにカットしておいて、次の酵素がもう少し短めにカット、さらに次の酵素がもっと短く切り分けていきます。
胃酸によってタンパク質がほぐれて広がっていれば、消化酵素が一気に裁断作業を進めやすくなります。一方、もつれて丸まった状態だと、内側にはなかなかハサミが入りません。胃酸がきちんとほどいたかどうかによって、消化酵素の働き方が大きく左右されてしまうのです。
手持ち無沙汰でさぼってばかりいる消化酵素になるか、仕事に没頭してテキパキ動く消化酵素になるか。自分の中の消化酵素の性格は、ある程度自分でコントロールすることができます。ポイントは、「食事をしているという動作」と脳をつなげることですね。
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