いきなりですが、「発酵」って、どんな状態でしょう?
うちの奥さんに聞いてみたら……
「ガスが出てる!」
なるほど~ それもあるかもしれませんね(笑)
発酵食品には強い臭いがあったり、食材が崩れかかっていたりするので、
「いい感じで腐りかかっている状態」くらいの答えかな、と予想していたのですが……
実は、前回のお話の中に、発酵の例が出ていました。
おさらいしておきますと……
腸の中には、栄養素を器用にカットしてパクパク食べる細菌たちが住んでいます。
彼らの「エネルギー生産システム」は性能が低いので、食べたものを最後まで分解できません。少し噛んだだけで、ペッと吐き出します。
この「吐き出したもの」がポイントです。
ヒトの役にたつものを出しているなら、その微生物の営みは「発酵」と呼ばれます。
逆に、ヒトにとって有害な物質が吐き出されるなら、「腐敗」です。
ですから、人間サイドのひたすら自分本位なネーミングなのです。
腸内の善玉菌も悪玉菌も、やっていることは同じ。
生きるためにパクパク食べて、ペッペッと吐き出しているだけです。
牛乳には、糖の一種である「乳糖」が含まれています。 乳酸菌は、乳糖を分解する消化酵素を持っているので、ブドウ糖を切り出してパクッと飲み込み、乳酸を吐き出しています。
乳酸はヒトの役に立つ分子なので、この乳酸菌の活動は「発酵」と呼ばれます。「乳酸菌は牛乳を発酵させて、ヨーグルトにする」となるわけです。
ブドウ果汁には、ブドウ糖がたっぷり含まれています。これに酵母を加えると……、ブドウ糖を食べて、アルコールと二酸化炭素を吐き出します。これも、発酵の一例です。
酵母は、腸内細菌などと同じ、単細胞の微生物です。 酵母の方が腸内細菌より性能の良い焼却炉を持っているので、糖をより小さくかみ砕いてから吐き出しています。 ちなみに、「高性能の焼却炉」とは、ミトコンドリアのことです。腸内細菌はミトコンドリアを持っていませんが、酵母は持っています。
発酵食品がなぜからだに良いのか、も考えてみましょう。
例えば、ヨーグルトには、乳酸菌やビフィズス菌が入っています。
彼らを生きたまま摂れるのが良いのでしょうか?
確かにそれもメリットの一つ。
でも、それだけではありません。
発酵食品には、菌が吐き出した食べカスが山のように入っています。これも摂る価値があります。酔わせてくれたり、うま味成分になったり。中には、抗菌作用、抗酸化作用、アンチエイジング作用が期待される分子もあります。
そして、寿命が尽きてバラバラになった菌の死骸も鬼のように入っています。
これも、すごく役に立つのです!
食べカスはともかく、死体の破片が役にたつ!?
この続きは次回お話ししましょう
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