前回は、「食後の異常な眠気」と胃酸の不足の関連についてでした。それ以外にも、眠気を招く原因はいろいろと考えられます。ついでですから、そのあたりもお話ししておきましょう。
満腹するまでご飯をおかわりした時などに、睡魔に襲われるのを実感されている方も多いと思います。これは、糖質の摂り過ぎで、血糖値のコントロールを失ってしまったために起こる眠気です。
コントロールを失っていない、正常な血糖値のパターンはこんな感じ。食後は血糖値が上昇し、30~60分くらいでピークを迎えます。食後2時間前後で空腹時の数値まで下がり、そのまま維持されます。
血糖値をうまくコントロールすることができず、食後にシャープに上がりすぎる人もいます。これは、「血糖値スパイク」として、マスコミでもよく取り上げられるようになりました。こうした場合、血糖値が下がり始めるとブレーキがきかず、正常な下限ラインを越えても下がり続けることがあります。
血糖値はいつでも「適切なゾーン」の範囲に維持されているべきなのですが、うまくコントロールできなくなってしまった人は、上下動が激しくなってしまうのです。
そして、血糖値が異常に下がりすぎた時に、眠気を感じやすくなります。
では、どうして「血糖値をうまくコントロールできない状態」になってしまうのでしょうか。
血糖値のコントロールを主に担当しているのは、インスリンとグルカゴンという2種類のホルモンです。まず、インスリンの働くメカニズムから確認していきましょう。
食事をした後は、血液中にブドウ糖がどっさり入ってきます。これを細胞の中にどんどん詰め込まないと、血糖値が下がりません。一番たくさんのブドウ糖を引き取ってくれるのは全身の筋肉(骨格筋)です。血中のブドウ糖の約8割は骨格筋に移動していきます。
ただし、ブドウ糖が骨格筋の前までやってきても、自分からは細胞の中へ入れません。
骨格筋の細胞の細胞膜には、「インスリン受容体」という、インスリンがピタリとおさまるタンパク質が埋め込まれています。ここにインスリンがすっぽりおさまると……
受容体の中で化学反応が起き、シグナル物質が放出されます。これが、細胞の中で待機していた「グルット4」と呼ばれるタンパク質を活性化させます。
活性化したグルット4は細胞膜へと移動していきます。
細胞膜に陣取ったグルット4は、ブドウ糖を取り込む扉になります。これで、ブドウ糖の入り口ができました。この扉を通過することで、ブドウ糖はようやく細胞の中へ入ることができます。
インスリンはこうしたやり方などで、食後に高まった血糖値を下げるために働いています。そのプロセスのどこかに問題があるから、血糖値をうまくコントロールできなくなり、血糖値スパイクや低血糖が起こるわけですね。
この先は、次回に続きます。
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