皆さんは、お昼ごはんを食べた後の授業や会議で、眠くなったことはないでしょうか?
食べ過ぎた後は、誰でも少しは眠くなるものかもしれません。
でも、世の中には少しくらいではなく、猛烈に過激に眠くなる人がいます。実は、ぼくもその一人。「仕方ないんだよ。前世がスペイン人だから」とか、よく言い訳をしていました。
食後に異常な眠気を感じるのには、いろいろな理由が考えられます。ぼくの場合、副腎疲労が原因と分かりましたが、血糖値のコントロールに問題があるケースもあります。
そして、胃酸の不足も、有力な候補の一つです。
今日は、そのメカニズムについてお話ししましょう。
食事を終えたころには、胃は全体を激しく動かしながら食べたものをこね回しています。袋に入れたうどん生地を全体重をかけて押しこみ、方向を変えてまた押し込むようなアクションを想像してください。胃にとっても大変な力仕事なのですが、胃酸が不足していると、その大変さは絶望的な重労働に変わります。
胃では、消化酵素のペプシンによって、タンパク質の消化が進められます。
胃酸が不足していると、用意できるペプシンの数が少なくなり、消化酵素としての切れ味も悪くなります(「ヨガ的な食事」⑧をご参照ください)。
胃酸には、タンパク質を変性させる働きもあります。タンパク質をほぐして、消化酵素が接触できる表面積を増やす作業です。ペプシンは、タンパク質の中で自分がカットできる位置が限られています。
このイラストでは、それをピンク色で示してみました。
タンパク質が十分にときほぐされていると、ペプシンは自分の担当位置にすぐアクセスできるのですが、もつれたままだと、(ピンクの位置が内側に隠れているので)ハサミが届きません。
ですので、胃酸が少ない場合、ペプシンの数が少ない、切れ味が悪い、働かずに遊んでいるヤツが増える、の三重苦になってしまうのです。
胃の中で消化が進んでいくと、食べたものはやわらかいお粥状になっていきます。お粥になれば押しつけ、こね回すのに大した力はいりませんから、胃のお仕事はどんどん楽になっていきます。でも、胃酸が不足してペプシンの働きが悪いと、いくら頑張ってこね回しても、柔らかくならず、胃はずっとフルパワーで働き続けないといけません。
仕方がないので、胃はもっと力を入れて頑張る。時間を延長して頑張るということになってしまいます。大変なエネルギーの消耗です!
もともと、食後は血液が胃腸に集まるため、脳への血流が一時的に不足して眠気を感じやすくなります。胃酸が不足して消化が進まず、胃が大量のエネルギーを垂れ流していると、脳への血液供給はますます不足してしまいます。これが、強烈な眠気の原因になるのです。
ちなみに、インスリンが過剰に分泌された時も強い眠気を感じやすいので、胃酸不足の人がごはん大盛りでおなか一杯になるまで食べてしまうと、よけい眠くなりやすいはずです。
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