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野菜

​丸元康生のスンナリ栄養学

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消化と吸収を助ける「ヨガ的な食事」⑬【by 平田ホリスティック教育財団 理事 丸元康生】


 「食事中はテレビやスマホに夢中にならず、食べることに意識を合わせる」

 これだけで、吸収される栄養素を増やすことができます。

 余計なお金もかからず、すぐに始められる健康法。糖質制限の人も玄米菜食の人も、仲良く(?)一緒に実行できる「奇跡の食事法」です(笑)。


 でも、実際に試してみると、「食べることに意識を合わせる」のは意外に難しいと気づくでしょう。多くの人は、しっかり味わって食事をすることに慣れていないからです。このあたりをティク・ナット・ハン師は、『マインドフルの奇跡』の中で次のように書いています。友人のジムさんとの思い出の場面です。


 「木の下に座り、ミカンを分け合って食べながら、ジムはこれからすることを話し始めました。心踊る計画を考えるときの常で、彼は自分がしていることを完全に忘れて、話にすっかり夢中になってしまいました。

 そのときも、ジムはミカンの一袋を口に放りこみ、噛みもしないうちに、もうつぎの袋を口に入れようとしました。ミカンを食べていることなど、まるで意識していなかったのです。

 わたしはひとこと、「まず口の中にあるミカンを食べませんか」と言いました。その言葉で、ジムは自分のしていることにハッと気がつきました。それまで彼は、まるでミカンなど食べていないかのようでした。いわば未来の計画を『食べて』いたのです。

 ミカンの中には袋があります。もし一つの袋を本当に食べることができれば、そのミカンを全部食べることができるでしょう。しかしその一袋さえ味わえないとなると、全部のミカンを味わうことなどとてもできません。

 ジムはそのことがわかりました。彼はミカンを口に放りこもうとしていた手をゆっくりとおろし、口の中のミカンに心を集中しました。そしてそれをじっくりと味わってから、つぎの袋に手を伸ばしたのです。」



 ぼくも、食事中にテレビに釘づけになることは(めったに)ありませんが、締め切りの迫った仕事に意識が飛んでしまうのはしょっちゅうです。いざ仕事をしようと机に座ると、今度は返信しなくてはいけないメールを思い出して、そればっかり気になったり……

 もし、あなたが同じタイプなら、食卓についた時に、「さぁ、今からは食べることに集中!」と意気込んでも、たぶん苦戦するのでしょう。普段テレビを見ていた人なら、消してしまうと退屈して、ますます雑念が浮かびそうです。

 ふと我に返ると、食べたお料理の味を何も感じていなかったり、唾液がぜんぜん出ていなかったと気づいたり。この食べ方では、消化酵素は切れ味の鈍いハサミになってしまいます。

 食事の時だけ「目の前のことに集中できる自分」に変身しようとしても、無理があるのです。普段からの練習が大切になるわけで、ティク・ナット・ハン師は食器洗い瞑想が役立つと勧めています。


 「皿を洗うとき、あとで飲むお茶のことばかり考えて、できるだけ早く片づけてしまおうとしませんか?もしそうだとしたら、皿を洗っているあいだ、本当に生きているとはいえないのです。

 皿を洗っているときは、それが人生でいちばん大切なことでなければなりません。お茶を飲むときは、それが人生でいちばん大切なことなのです。お手洗いに行くときも、それを人生でいちばん大切なことにするのです」



 なぜ、皿洗いを練習台に選んだのかというと、日常の中で一番どうでもよい雑用のように思われているからです。重要度最低ランクのタスクに対しても最高に細やかな意識で取り組めるなら、もっと大切に思えるお仕事には楽に集中しやすくなるはずです。

 一つ一つのお皿や茶碗を、赤ちゃんの時のお釈迦様と同じくらい、かけがいのない神聖なものと考えて、キリスト教徒の方なら生まれたてのイエス様だと考えて、心がそれないように、静かに呼吸をたどりながら洗ってください、とハン師はアドバイスしています。


 「皿洗いは瞑想そのものです。心をこめて皿洗いができなければ、静かに座って瞑想することもできないのです」



 「あ~ヤダヤダ!なんで、いつもアタシがやらなきゃいけないの!」と目じりを吊り上げて食器洗いをしている自分と、価値のある瞑想の時間ととらえておだやかな眼差しで洗っている自分を想像してみてください。どうせお皿を洗わないといけないなら、おだやかで平和な気持ちでその時間を過ごす方が、幸せも訪れそうですよね。

 まず、目の前のことを大切に味わう時間を増やしてください。それが、からだの中に吸収できて、健康づくりに役立つ栄養素を増やすことにもつながっていくはずです。

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